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エッセイ

ワイワイたすけ合い 「8.身上事情は道の花」その1

8.身上事情は道の花
 
 病を活かせる人はかっこいい 

 
 
クイーン・エメラルダス

 銀河鉄道999(スリーナイン)やキャプテン・ハーロックなどの漫画の作者、松本零士氏の作中にクイーン・エメラルダスという女性の海賊がいます。999のメーテルの双子のお姉さんで、ハーロックのような傷が左頬にあるのですが、隠すこともなく、凛(りん)と、颯爽(さっそう)としています。女性で、顔の傷を勲章のようにしているキャラクターはまれですが、そのエメラルダスのようにカッコイイ女性を見たことがあります。

 婦人科病棟の廊下で婦長さんと話をしていたその人は、顔に傷があるわけではありませんが、お腹には子宮と卵巣を取った傷があり、髪の毛も一時は抗がん剤で全部抜けてしまったそうです。今は、生えそろった髪のサイドを一房緑のメッシュに染めて、綺麗にお化粧して、背筋をピンとのばし、人の目をまっすぐに見て明るく笑う女性でした。生死の境を乗り越えてきた誇りと、女らしさを兼ね備えていました。

 カッコイイ女性は他にもおられます。産婦人科外来で、遠からぬ死期を宣告されつつも、取り乱すことなく自分らしく生き抜こうとされる人、愛する人の子どもを産む可能性のために不妊治療を続けられる人、更には「(取りきれていない)がんも私の体の一部だから、仲良く一緒に生きていきたいの。たとえ、それが命取りになっても、親神様が私に下さったのだから。死なない人はいないしね」とニッコリ言われる人達です。

 今の笑顔に行き着かれるまでに、どれほどの涙や悩み、恥ずかしさや辛さ、身体の苦痛を乗り越えて来られたことでしょう。だからこそカッコよく、女らしく生きていると私は思います。

 女性の象徴に関する病気などになって、「女らしさとは何か、女らしく生きるとは何か、そもそも女性の本質とは何か」という、大げさに言えば、アイデンティティの確認、再構築の過程を、大変な思いをして辿られるように思います。一度壊れて、もう一度思い直し、作り上げた女らしさは、花のように、美しく優しくかぐわしくしなやかで、かつ凛としている気がします。

 

「本当の恥ずかしい、本当のかっこいい」とは

「嫁入り前の女性に、傷を付けたらたいへん」と世間では言います。女性を大切に思っているからの言葉でしょうが、「商品価値が下がる」というニュアンスも若干感じられます。一方、「男の傷は勲章」とも言いますが、本来体の傷は男性も女性も、病気や怪我を負いながら乗り越えてきた勲章で、恥ずべきものではないと思っています。ついでに、年を取ってできた皺も、長生きできた勲章ではないでしょうか。

 傷も皺も、堂々とまたは自然体で慎み深くしていれば、使い込んで味のある骨董品や、いわれのある逸品のように、「付加価値」がつくとさえ思います。私は、人間にとって真に恥ずべきことは、内面の「自分さえよければ、今さえよければ」という心に負けて、人を傷つけ蔑(ないがし)ろにしてしまう弱さや、それを潔く認め改められない弱さだと思います。

 

本当の正義の味方

  もしかすると本当の正義の味方も、童話の「幸福の王子」が、燕に頼んで、体の宝石を貧しい人に配ってしまって、ボロボロになった時のような姿をしているのかもしれません。満身創痍(そうい)(全身傷だらけのこと)、疲労困憊(こんぱい)(疲れ果てていること)、質素だとしても、侵しがたい徳の力を持っていて、優しく微笑(ほほえ)める人のような気がします。

 ちなみに私の個人的ヒーローの一人、近所のYさんは、ストマ(人工肛門)とIVポート(点滴用人工血管)とサングラス(眼玉保護用)で、さながらサイボーグのようなお体ですが、今日も町内の安全と、自身の運動のため、日に何回か町内をパトロールしてくれています。お蔭で、空き巣や不審火もありません。「自分も頑張ろう!」という勇気も貰えます。がんばれ病人ヒーロー、病と共生している強き優しき人!

ワイワイたすけ合い「8.身上事情は道の花」その2へつづく

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