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エッセイ

ワイワイたすけ合い 「6.難儀するのも心から」その1

6.難儀するのも心から
 
 自殺・自傷の心の痛みに誠の心を

優しき友の戦死

 私の親友のAさんは、優しくて賢くて、上品で勇気もあって、印象を花に喩えると、ショールを纏(まと)ったスイートピーのような人でした。Aさんは生まれつきの心臓病のため小さい時から入退院を繰り返し、手術をして完治していました。入院中お母さんが自分のために泣く姿をよく見て育ったそうで、親に心配を掛けたがらない、親や人をいたわり気づかう人でした。

「親が悲しむから、私は絶対に自殺はしない」と、普段言っていたAさんが、自殺してしまったのは卒業間近のことでした。

 論文と卒業後の進路が理想通りにいかず、懸命に努力していましたが、そのストレスから、だんだん眠れず、食べられず、無気力になり、物事を悪い方へ悪い方へ考えていってしまうようになりました。

 苦しい日々の中、自分を「うつ病」と自己診断し、私を付き添いにして精神科を受診し「うつ病とまでは言えない」と言われました。怖くて登校拒否のようになっていた学校から、実家へ引っ越しの手配もしました。しかし、最後の登校になるはずだった日の朝、亡くなってしまいました。

「私のうつ状態を見たら、悲しみのあまり一家心中になってしまう」とも言っていたので、自分一人が犠牲になることで家族を守るつもりだったのかとも思います。とにかく絶望的な暗闇と必死で闘い「優し過ぎるがゆえの戦死」だったと私は思っています。

 さて、遺された者の悲しみは、「悲しみ」なんて生易しいものではありませんでした。私の頭には悲しみの濃霧が常に立ちこめ何も考えられず、ただ涙が流れ続ける中に、「『学校に行け』と言った私が殺したのではないか? 登校日の前日は、泊まり込んで一緒にいるべきだったのではないか? 数人の友人と作った『Aさんを支える会』をもっと早く作り見守ればよかった。…そうすれば、今でも生きていて、いつかまた隣で花のように微笑んでくれたのではないか? …苦しくなかったろうか?」という自責の念が湧いてきて、一人でいると発作的に自分も同じことを真似してしまいそうな状態でした。

 たかが数年の付き合いの私ですら心身共にボロボロなのに、何十年も慈しみ育ててこられた、ご両親ご家族の辛さ、悲しさ、無念さは想像を絶するものでした。全人類の親である親神様はきっと、それ以上の痛みを味わいつつ、Aさんもご家族も、そして関係者一同をも、その懐の中に、抱きしめて下さったように、私は今感じています。

 

一番大事なもの

 世の中で一番大事なものは、お金でも名声でも自分の都合や楽しみでもなく、「人」です。人はいつか亡くなりますが、できるだけ大切にされて亡くなるべき存在です。どんなに辛いことがあっても、寿命が来るまで、決して自殺はしてはいけません。自分や人の命を守るためなら、命以外のものを手放しても構わないと思います。沈没しそうな時はどんな大事な荷物でも投げ捨てる勇気が必要です。

「自分が変だ」と思ったら、人に「助けて!」と、それに気づき助けてくれる人を得るまで、アピールし続けましょう。一方、助ける側の時は、相手の「自殺しないよ。一人でも大丈夫だよ」なんて一時的表面的な「言葉」に惑わされずに、相手の表情、素振り、全体的雰囲気を深く観察し、第六感なども動員して、真のサインを見極めましょう。さらに、自分の都合や期待、思いこみで、サインをキャッチする目が曇っている時があります。自分の都合、こだわりを捨て、心を澄まして、精一杯見極めましょう。

 人助けをする時、自分一人では共倒れしそうな時は、専門家も含めて人を集めて皆で協力しなくてはなりません(文献①より)。「他の人に知られたくない。心配かけたくない」と言われても限度があります。当人の自尊心に最大の配慮をしつつも、誠の心で、人材を集め互いに助け合いましょう。

「うつ状態」になることは恥ずかしいことではなく、誰でもなりうることです。傍らでAさんも「私のような人を一人でも出さないで」と応援してくれている気がします。

 

【参考文献】①古市俊郎「人生相談『不安定な友人にかかわるのが負担』」天理時報(立教168年5月29日号)

【参考文献】②小国綾子「魂の声 リストカットの少女たちー私も『リスカ』だった」講談社(2005)

【参考文献】③古市俊郎「学生担当勉強会『思春期との向き合い方』」天理時報 立教170年3月11日号

【参考文献】④水谷修「こどもたちへ 夜回り先生からのメッセージ」サンクチュアリ出版(2005)

 

(草場直子 2008年3月発行『ウィズ・ユゥ』vol.19 より)

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